● 荷造りの際、足ヒレが大きすぎてかさばる。
● 遊泳中、足ヒレの抵抗が大きい割に進まない。
● 遊泳中、つま先に痛みを感じる。
● 水から上がるとき、何度も転びそうになる。
ゴム製のフィンの欠点
1.持ち運びにかさ張る
旅行時に荷造りをしていると持っていくことをためらうほど既存のフィンはかさ張ります。
2.水の抵抗が大きい
推進力を高めるためにフィンをより長く硬くすればするほど水の抵抗が大きくなり、足の動く角度よりもフィンの動く角度が大きくなり乱流が発生し易くなります。
3.使用時に爪先に傷みが生じる
推進力を高めようとフィンの剛性を高めれば高めるほど、爪先に傷みが生じ易くなります。
理想のフィンの形状を探求していくと、やはり水の中を高速で泳ぐことができるイルカやカジキといった生き物の尾びれに行き着きます。
これらの尾びれは、高いアスペクト比(ひれの横幅と縦の長さを比べると横幅の方が長い)や適度な剛性と弾性、ヒレの断面図の形状など同じような特徴があります。
進化の結果、種の違いを超えて獲得した共通項といえます。そして、尾びれの動かし方にも同じことがいえます。上下方向と横方向の運動の違いはありますが、簡略化すると共に下図のようになります。
図はイルカの尾びれの動きを横から(カジキの場合は上から)見た図で、濃い青の部分が尾びれになります。
尾びれは、ヒービング(横振動)とピッチング(回転振動)が組み合わされて矢印の方向に進んでいきます。ひれがバタバタと大きく回転しないので、水の抵抗を抑えながら効果的に揚力を発生させて推進力を得ることができます。
下図は尾びれが揚力を発生させる仕組みを示しております。
まず、尾びれが図中で上方向に動くとき黄色い実線方向に水から力を受けます。(実線の逆方向に水を押すとも表せます。)
この黄色い実線方向の力を黄色い点線の尾びれの上下方向と水平方向の力に分けて考えますと、黒い矢印と同じ方向の力を見て取ることができます。この力が揚力、すなわち推進力となります。(黒い矢印と反対方向に水を押しているということもできます。)
そして、この尾びれの理想の形状を考えますと、イルカ等の尾びれのように横長のものとなります。
フィンの理想形は、イルカ等の尾びれと同じように横長で、同じようなヒービング(横振動)とピッチング(回転振動)を組み合わせた動きを再現できる機構を備えたものである考えられます。そしてその理想形のフィンは世の中に存在します。(弊所の商品ではありません。)
しかし、それはモノフィンなのです。
まず、モノフィンであるということは水の中で両足が縛られているという点です。このような状況を遊泳中は避けたいと思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そして、もう1点は後方に押し出す水の流れをより強く作り出すためには、フィンをイルカのようにより速く動かす必要があるという点です。あまり速くフィンを動かせない場合、横長の形状では後方への水の流れを十分に作り出せないことも考えられます。
余談ですが、以前イルカの近くで泳ぐ機会があった時インストラクターの方に、”イルカは尾びれでお相撲さんを持ち上げられるほど力が強いので、尾びれの近くにはいかないように”、と注意されたことがありました。
イルカ等に比べて非力な人間は、水中でフィンを強く速く動かせないのかもしれません。
ここで、モノフィンではなく、ビーフィン(片足ずつ履く通常タイプのフィン)で理想の形状を探りたいと思います。
まずは、下図のようなシルエットのもの。
フィンとしては、もっとも一般的なものですが、推進力を求める上級者になるほど縦の長さが長く且つ水の抵抗に負けないよう硬くなっていきます。しかし、適度な弾性があるためフィンにしなりが生じ、効果的に推進力を発生させます。
フィンの動きは下図のようになります。(横から見た模式図で濃いグレーがフィン、薄いグレーは足を表しています。)
とても優雅な感じがします。技術の進歩により、剛性としなやかさを併せ持つ素材が開発され、素晴らしいフィンができております。
しなやかさによってフィンは下図のように遊泳中に形を変えていきます。
フィンの推進力は、図中のピンクの丸で囲まれた部分でもっとも大きく発生すると考えられますが、ピンクの丸の位置がフィンの動きによって根元から先端に順次移動しているということは、力のかかる位置及びタイミングが分散されているといえます。これにより、フィンの動きの中で一度に強い力がかかることなく、効率よく推進力を得ることができるものと考えられます。
しかし、効果的に推進力を得るためには足を動かす速さ(力)にあったフィンの硬さを選択する必要があり、硬さがあっていない場合は逆に推進力が低下します。(フィンのしなりが適当でないと水を勢いよく押せなくなることやフィンの波動運動の形状の違いにより乱流の発生の仕方が異なることなどによるものと考えられます。)
また、推進力を求めれば求めるほどフィンが長く硬くなるため抵抗が大きくなり、より大きな力が必要になります。場合によっては、つま先部分に痛みが生ずることもあります。
さらに、フィンが長くなることで足の動きに比べてフィンの動く角度が大きくなり、乱流が発生し易くなることが考えられます。
そこで、出てきたのがフィンの先端中央に切れ目が入っていたり、先端が大きく足方向に湾曲した形状のものです。(下図は先端中央に切れ目が入っているもののシルエット)
この切れ目等により、水の流れを整え乱流の発生を抑えることができ、フィンが動かしやすくなるものと考えられます。
また、面積を減少させたり、フィンの切れ目周辺部分の角度が変化することで抵抗を減らすことができます。
下図の矢印は水の流れを表しています。
ただ、抵抗の減少と同時に揚力の減少によって推進力が減少するのは避けられません。(面積が減少していない場合でも、揚抗比の変化による影響があるものと考えられます。)
ここで、我々は考えました。
フィンに切れ目を入れず、もっと積極的に水の流れをコントロールできないかと。
さらに、イルカの尾びれの動きのようにフィン自体をバタバタさせないで(足の動きの角度よりもフィンの動く角度を小さくして)抵抗を抑えられないかと。
ヒントは空に浮かぶ凧にありました。
上図のようなスポーツカイトはその形状によって上下左右方向のバランスをうまくとり、空気の流れから効率的に揚力を発生させます。(初めてこのタイプの凧を揚げた時は、空に揚がっていく勢いに本当に驚かされました。)
我々は同じような形状のフィンは、水の流れから効率的に推進力を発生させられるのではないかと考えました。
このアイディアを実現させるために必要なものは、充分な剛性と弾性をもつカーボンファイバー製のフレームと丈夫なナイロン製のシートでした。
上図は、我々が開発したフレーム&シート構造のフィンが水の流れを受けているときの様子を真横からと斜め上方から示した模式図です。矢印は水の流れを表しています。
フレームの上下及び横方向のしなりによってシートが先端中央に向かうにしたがって湾曲します。これにより、水の流れはフィン中央に集められながら後方に勢いよく押し出されると考えられます。
さらに、フィンのシート中央部分とフレームの作る角度が、水の抵抗を受けたフレームのしなり具合によってコントロールされます。
下にフィンの動きを横から見た模式図を示します。図の濃い青がフィンのシート中央部分の向き、グレーの点線がフィンのフレーム先端部分、濃いグレーがフィンのフレームの根元部分、そして薄いグレーが足を表しています。
フィンのシート中央部分(濃い青)の向きはフィンのフレーム根元部分(濃いグレー)に対して角度が変わりますが、進行方向(矢印)に対する角度は足の動きほど大きくなりません。
これは、前にご覧いただいたイルカの尾びれの動きと非常に近いと考えることができます。この動きにより、抵抗を抑えながら効果的に揚力を発生させ、大きな推進力を得ることができると我々は考えております。
既存のフィンが2次元のしなりで効率よく推進力を発生させるのであれば、3次元でフィンの形状が変化すればもっと効率よく推進力を得ることが可能なのではないでしょうか。
上図右側は既存のフィンがしなり、2次元で形状が変化している様子を表しております。
上図左側は、フレーム&シート構造のフィンの先端中央部が凹み3次元で形状が変化している様子を示しております。
フレーム&シート構造のフィンは、イルカ等に比べて力の弱い人間が効率よく推進力を得るための新しいフィンの形だと我々は考えております。
世田谷プロダクト・デベロップメントが開発いたしましたフレーム&シート構造のフィンの詳細につきましてはコチラをご覧下さい。
2015年7月15日発売の雑誌”Begin 9月号"のアウトドアグッズの特集コーナーで折りたたみ式フィン”セイルフィンFシリーズ”が取り上げられました。
2014年8月29日、NHKの情報番組”おはよう日本”のまちかど情報室コーナーで折りたたみ式フィン”セイルフィン”が紹介されました。
2013年8月10日発売の雑誌「BE-PAL 9月号」の”Garage Impression”のコーナーで折りたたみ式フィン Fシリーズが取り上げられました。
2013年8月10日発売の雑誌「月刊ダイバー 9月号」の”Monthly Pick Up”のコーナーで折りたたみ式フィン Fシリーズが取り上げられました。
2013年6月17日にWebサイト「マイナビ ウーマン」のトピックス・コーナーで折りたたみ式フィンが取り上げられました。